M染研究所


2018.3.16
ログウッド染め

天然染めの中でも最も難しいとされる黒染めに挑戦しました。

使用した素材は「ログウッド」。
「ログウッド」はメキシコが原産のマメ科の常緑高木で、その安全性ゆえ古くからマヤ族染料として使用してきたとされています。
ログウッドは邪気を払うと言われ、ナポレオンのコートや軍服の染色にも使われてきた染料です。
基本の白Tシャツでチャレンジしました。

①地入れ
まず染める前の準備として、45℃のお湯に10分ほど浸します。
繊維中の空気を追い出し、水とよく馴染ませます。

②精錬(せいれん)

軽く脱水した後、モノゲンなどの中性洗剤に15分ほど浸して軽く脱水し、すすぎ、また脱水します。
汚れを落とし染めムラをなくす為の作業です。


③下地処理
化学薬品で手間の掛からないものも発売されていますが、天然染めにこだわりタンニン酸を使いタンニン処理します。綿や麻などの植物繊維はウールやシルクなどのようにタンパク質や硫黄分が含まれていない為、色素が沈着しにくい。
綿や麻を染める場合は、面倒でも必ず下地処理が必要です。
また、Tシャツなどは汗がつきやすい為、クエン酸に弱く色が抜けやすい為、タンニン酸での処理が必ず必要です。
150gのTシャツに対して7.5gのタンニンを60℃のお湯に1晩浸けておきました。(浸け過ぎるのも良くないのかも?)

翌日すすいだものが最初の画像です。ピンクっぽくなっていますね。

④媒染
媒染(ばいせん)とは、染料を繊維に定着させる作業の事です。
天然染料は媒染という工程を必要とします。染料に浸ける前に行う先媒染と、染料に浸けてから行う後媒染、染色と同時に行う同浴染があります。
それぞれ1長1短ですが、今回は先媒染。
媒染料によって同じ染料でも染め上がる色に違いがあります。アルミ媒染、チタン媒染などもありますが、黒くしたい場合は鉄媒染。木酢酸鉄を使います。
150gのTシャツに対して約15gの木酢酸鉄を使い、40℃のお湯に約1時間浸しました。(長すぎても良くない?)
全体にムラなく液が付着するように、空気を抜きながら液の中で操ります。
その後脱水してすすぎ、再度脱水しました。それが2番目の画像です。ブルー紫っぽい色になっています。

⑤染色
150gのTシャツに対して30gのログウッドを使用した染料にTシャツを浸け、火をつけて70℃まで温度を上げ約1時間。やはりムラなく染着するように液の中で操りました。その後脱水してすすぎ、さらに脱水しました。

それが3番目、外に出したものが4番目の画像です。濡れているので濃く見えますが、やはり紫っぽい色です。染料の鮮度の問題もありますが、なんとなくもったいないので、同じ液でさらに媒染と染色の工程を何度か繰り返しました。

乾かしてはいないので、どれほど違いがあったかは分からないのですが、5番目の画像が全ての工程を終えて脱水して吊るした所です。Tシャツが2枚ありますが、右の薄い方が今回白から染めたもの、左は前回1度この工程を経て、さらに今回2度目の重ね染めをしたものです。染料をケチっているのがばれましたね。
一目瞭然ですが、ログウッド染めでも2度染めをしないと黒っぽくには染まりません。下の画像が2度重ね染めをしたもの。

そして最後の画像が、そのログウッド1度染めのものです。2度染めは全体がある程度黒くなりましたが、1度染めでは染めムラも見えてしまっていますね。
やはり天然染めは手間が掛かります。
化学染料なら1発で染まってしまうものをこれほど手間が掛かるわけです。
でも愛着がわきますね。色味にも味があります。
古くから使われてきた歴史も感じます。

2018.2.9
天然藍染め 続き

藍染めしたTシャツです。
染める前の白Tシャツ。無印良品の白無地コットンT私物です。

1回目に染め(吸着)、手で絞り、乾燥をした状態です。
ゴム手袋をして作業をしながら、手袋を脱いでスマホで撮影したので、あわてていてぶれちゃってます(笑)。
手で絞って広げた直後ですので、結構濡れているので色は濃く見えますが、実際はもっと薄いです。まだ青というより緑っぽいですね。

そして染料吸着、手で絞り、広げて乾燥を5時間繰り返したTシャツを持ち帰り、1日水につけて完全に乾燥させた状態です。
吸着が5分、絞りは素早く、広げて乾燥が5分を5時間繰り返しました。
結構紺になったつもり。味わい深い色になりました。
黒に近い濃紺だと2日以上掛かるのだと思います。

体験では1回の作業で止めても良いです。
普通は3~4回でブルーな色味で終わらせる人がほとんどです。
本当にうつくしい。

2018.2.7
天然藍染め灰汁発酵建て

私は紺色が大好きです。特に少し赤みが入った藍染めの紺に魅せられた一人です。藍の匂いは懐かしい記憶を甦らせてくれました。それは中学の時の授業で体験した剣道着の匂いです。藍の色のすがすがしさは、雪の日の静寂にも似て、背筋がピンとするような気持ちにさせてくれる、日本人にとって特別な色のような気がします。
そんな日本の伝統的な染色である藍染めも、実際は化学染料や薬品を用いた簡単な方法で染められて「藍染め」と言われているのが現実です。しかし、そんな現代においても化学薬品を一切使用せず、江戸時代から行われてきた日本古来の藍染め法である「天然藍灰汁(あく)発酵建て」で藍染めをしている工房が東京・青梅市にあります。
藍の原料となる良質な「すくも」じは大変希少であり、発酵させて藍液を作る事や管理が大変難しく手間ひまを要します。現代の名工である徳島の藍師/新居修さんが作られた貴重なすくもで本物の藍染めをされているのは、東京ではこちらの「壷草苑(こそうえん)」さんだけです。
先日そんな貴重な「天然藍灰汁発酵建て」の藍染めを体験してきました。

藍液を作るには、木炭に熱湯を加えてとった灰汁を入れ、そこにすくもと灰汁、日本酒と小麦ふすまを加えます。発酵に適した温度を保ちながらこまめに2~3日混ぜます。すると発酵が進み、藍の表面に「藍の華(はな)」という泡が立ち始め、さらに2~3日掛けてゆっくりと灰汁を加えてゆく。それを10日ほど繰り返してようやく発酵が安定して藍が建ちます。ようやく藍液の完成です。

建てた藍は茶褐色で、その中に生地を入れ隅々まで十分に吸着させ取り出し絞ります。広げて空気を含ませます。藍染めは青色の染料に染め付けるのでなく、酸化させる事で反応して青い色になります。その点が他の草木染とは違います。この染め(吸着)→絞り→広げるという作業を約5分くらいの間隔で何度も繰り返し、少しずつ染まってゆきます。1回の作業では分からないほど微妙な染まり具合です。

私は深い紺にしたかったので、体験時間いっぱい10時~15時まで5時間作業し続けました。ブルーから紺と呼べる色味に近づけましたが、職人さんでも濃紺にするには2~3日かかるそうです。化学染料ですと30分くらいで濃紺に染まります。
ただ普通の藍染め体験は自分で納得いけばいつでも終わりに出来ますよ。

自然界から取れる原料のみの藍液は、身体に害はありません。職人さんたちは素手で染めの作業を行っているくらいです。ただ、優しい染めのため、何度も何度も染めては絞り乾燥という作業を繰り返し、だんだんと少しずつ染まっていきます。すぐに染まってしまう化学染料に比べ、本当に根気の要る作業の繰り返しです。そして何より、それを身に付ける人にも環境にも優しい。使用後の化学染料は大変有害ですが、藍の液は野菜畑の良質な肥料にさえなります。

また、デニムパンツは合成藍であるインディゴで染められているので色落ちが激しいですが、天然藍は色の安定後は色落ちが少ないです。洗濯でも水が青くなったとしても他のものに移る事はほとんどなく、あったとしてもすぐに洗い落とせます。
日本古来の伝統染色技法を体験してみたい方は是非こちらの工房をお薦め致します。感動しますよ。

 

〒198-0052 東京都青梅市長淵8-200
電話0428-24-8121
藍染工房 壷草苑(こそうえん)
藍染体験 土日祝日のみ
http://www.kosoen-tennenai.com


最近特に「染色」に惹かれます。こちらの「M染研究所」では、これからも様々な染めの情報を発信していきたいと思っています。